全館空調と24時間換気の違い|全館空調のメリット・デメリットも解説
最近耳にすることが増えた「全館空調」という言葉。なんとなく、家全体が機械でしっかり管理されているような「いいイメージ」を受けます。
たしかに家中を一年中快適にするという意味では優れたシステムですが、メリットとデメリットが存在します。
本記事では、全館空調の目的やメリット・デメリット、24時間換気システムとの違いなどを解説します。
高気密高断熱住宅に採用する最適な空調システム選び、そして建築会社選びにお役立てください。
全館空調と24時間換気システムの違い
全館空調の方法は住宅商品やメーカーごとにさまざまです。そんな全館空調を一言で表すと「各部屋にエアコンを設置することなく、家中を快適な温度と湿度に保つ仕組み」となります。
しかし、全館空調という言葉には明確な定義がありません。24時間換気システムと連動している場合もあれば、換気とは切り離している場合もあります。
24時間換気システムは、法律で設置が義務付けられた「住宅を適切に換気するシステム」です。対して全館空調は「住宅全体の温湿度調整」を担うシステムです。
全館空調の『空調』という言葉から「換気もしっかりできる」イメージを持たれる場合もありますが、全館空調自体は換気に関する法律や性能基準をクリアするようなものではないということを押さえておきましょう。
住宅の換気基準をクリアするためには「24時間換気が必要」なのです。
逆を言えば、24時間換気システムでは快適な状態に室温をコントロールすることはできません。室温や湿度は、しっかりとした換気計画に全館空調やエアコンを組み合わせてコントロールする必要があるのです。
全館空調のメリット・デメリット
つぎに、全館空調の採用を検討するため、メリット・デメリットについて整理します。
全館空調3つのメリット
全館空調には以下の3つのメリットが挙げられます。
●LDKがスッキリとした空間になる
●エアコンの風が気になりにくい
●家中の温度が一定で快適
それぞれ詳しく解説します。
1.LDKがスッキリとした空間になる
全館空調システムでは一般的に「エアコン」もしくは「特殊な冷暖房機器」を1か所に設置し、ダクトを使って各部屋に空気を送ります。
そのため、各部屋にエアコンを設置する必要がなくなり、特にLDKなどはスッキリとした空間にできます。
2.エアコンの風が気になりにくい
全館空調ではダクトや床から優しく空気が送られるため、エアコンの風が身体に直接当たりにくくなります。
そのため「エアコンの風が苦手」という方は、不快感を低減することができるでしょう。
3.家中の温度が一定で快適
全館空調の一番の目的は『家中の室温を一定にすること』です。
各居室はもちろん玄関や廊下、浴室・トイレの温度も一定とするため、寒い冬に起こりやすいヒートショックのリスクを減らし、一年中快適な温度環境で健康的に過ごせるでしょう。
全館空調4つのデメリット
全館空調には以下の4つのデメリット(懸念事項)が挙げられます。
●初期費用の高いシステムがある
●メンテナンス費が高い場合がある
●光熱費が高くつくことがある
●故障時の対策が必要
それぞれ詳しく解説します。
1.初期費用の高いシステムがある
全館空調は導入費用の目安が100~250万円程度と言われています。エアコンを複数台設置しても費用の目安は50万円程度ですから、全館空調は割高と言えるでしょう。
しかし、全館空調がハウスメーカーの標準仕様となっている場合、システム単体でいくらするのかは分かりにくいのが実状です。
なお、空調室に市販のエアコンを設置する比較的安価な全館空調システムもあります。この場合、各部屋にエアコンをつける必要はありませんが、ダクトやフィルターなどの施工で150万円程度かかるようです。
2.メンテナンス費が高い場合がある
全館空調システムは、定期的な点検やメンテナンスを行う必要があり、その費用は年間1~3万円とも言われています。
また、全館空調システムも機械ですから、10年ほどで故障の可能性があります。システムが高額であるほど取り換え費用は高くなってしまいます。
3.光熱費が高くつくことがある
高気密高断熱住宅では、エアコンをつけっぱなしにすることで「微弱な運転でエネルギー消費を抑える」という考え方があります。全館空調も同じく「つけっぱなし」が基本です。
ただし、普段あまり使わない部屋がある場合、全館空調では余計な電気代がかかっていることになります。
4.故障時の対策が必要
全館空調では冷暖房機を1か所に集中させています。そのため、機械が故障した場合には家中の空調ができなくなります。
エアコンであれば1台故障した場合、別の部屋に避難する方法がありますが、全館空調ではそれができません。
暑い夏の日などは室内でも熱中症の危険があります。万が一、故障が起きた際の対策は考えておいた方が良いでしょう。
第一種換気+エアコンの家は寒い?
24時間換気システムは給気・排気の方式によって、第一種・第二種・第三種という3つの種類に分けられます。
第一種換気システムは排気・給気を機械で行い、さらにその際に熱や湿度を交換できる商品があります。それにより、特に冬場の寒い空気が室内に入るのを防ぐメリットがあります。
では、このような第一種換気システムとエアコンの組み合わせでは快適な住空間をつくるのには不十分で、全館空調を考えた方がいいのでしょうか?
高気密高断熱な住宅は第一種換気システムで十分
私たちは、断熱等級5以上の高気密高断熱住宅であれば全館空調は不要で、第一種換気システムで十分快適と考えています。
なぜなら、隙間が少なくしっかりとした断熱処理が施された高性能な住宅であれば、エアコンだけでも十分快適な住空間を実現できるからです。
全館空調の採用は費用対効果で考える
全館空調が必須の住宅商品でなければ「費用対効果」を考えて空調設備を選択するべきでしょう。
海外や北海道などの寒冷地では「セントラルヒーティング」と呼ばれる全館空調が普及しています。
その理由は「住宅の広さ」「つけっぱなしの文化」「メンテナンスの簡易さ」などを考慮すると、全館空調の費用対効果が高いためです。
熊本県の気候や高性能住宅であれば第一種換気システムでも快適であること、そしてそれぞれのメリット・デメリットや費用対効果を比較し、どのような空調システムが最適か検討してください。
検討の結果によって選ぶべきハウスメーカーや工務店も変わってくるでしょう。
第一種換気システムについて詳しくは「24時間換気システム|第一種換気のメリットや熱交換の仕組みを徹底解説」ページをご覧ください。
まとめ
本記事では、全館空調の目的やメリット・デメリット、24時間換気システムとの違いなどを解説しました。
「全館空調」と24時間換気システムは、室内の快適な空気環境をつくるという共通点はあるものの、役割が異なります。
全館空調の目的は「家中の温湿度環境を常に快適にすること」です。そのため、住宅性能や間取り+エアコンで「家中を快適」にできれば、コストのかかる全館空調を採用するメリットは少ないと言えます。
工場で一気に生産される大手ハウスメーカーの住宅商品は、全国どのエリアにも対応可能な仕様になっているでしょう。しかし、熊本県では必要のない設備の導入コストや無駄なランニングコストがかかる可能性もあります。
熊本工務店では、地元熊本県に最適な性能の住宅をご提案しています。
熊本県内で一年中・家中快適に暮らせる家を建てたいという方は、断熱・気密の正しい知識でお客様のライフスタイルと熊本の気候に合った住宅を提案する熊本工務店にご相談ください。