24時間換気システムの値段は?1種・3種換気の費用対効果も検証
24時間換気システムについて調べると「ランニングコスト」を比較する記事は多くあります。しかし、機器の値段を比較した記事はほとんど無いのにお気づきでしょうか。
本記事では、24時間換気システムの値段を把握するために必要な「換気の種類」と「主な性能」を解説し、値段の目安をご紹介します。
目次
24時間換気システムを選ぶ要素
じつは、建築業界に関わる専門家の間でも24時間換気システムの考え方は様々です。
また、どのような換気システムを採用すべきかも意見が分かれ、たくさんの住宅専門家が各々の考え方でコラムや動画を発信しています。
何故そのように専門家の意見が分かれるのか。主な理由として、以下の5つが挙げられます。
①24時間換気システムには種類ごとにメリット・デメリットがある
②商品の値段の幅が広く、採用する商品によって建築予算にも影響する
③ライフスタイルや住宅に求める性能によって最適なシステムが変わる
④効率の良い換気計画には換気システムだけでなく間取りなども影響する
⑤どのような気候の地域に家を建てるかによって考え方が異なる
このように、最適な24時間換気を選ぶ際には、複数の要素を掛け合わせて考える必要があるのです。
この時点で「難しそうだから専門家に任せよう」と考えてしまう方もいらっしゃるかもしれませんが、それはお勧めしません。
なぜなら、24時間換気システムは居住者の健康問題に直結する設備だからです。
「健康」という非常に重要な部分だからこそ、自分たちの建てる家に採用される換気システムの最低限の特徴は理解しておくべきです。
24時間換気の値段|換気システムの必要性
住宅への24時間換気システムの設置は2003年に義務化されました。
平均的に、人は1日の半分以上を家の中で過ごしており、その間は室内の空気を体に取り込むことになります。
もし、息をした瞬間に分かるような『汚染された空気』が充満していた場合、誰もがその空間から逃げ出すでしょう。
では、もしそれが気づかないレベルだったらどうでしょう?
気がつかないうちに健康が侵されていくのですから、考えるだけでゾッとしますね。
過去には、建材の揮発性有機化合物やカビ・ダニが原因のハウスダストにより健康被害を起こす「シックハウス」が社会問題になりました。
それを受けて、居住者の意向に関係なく「健康を守るために」室内の強制的な換気を義務付けたという経緯があります。
24時間換気の値段|システムの種類と特徴
24時間換気の方法は主に3種類あり、住宅では基本的に第1種換気と第3種換気が採用されます。
第1種換気
給気と排気の両方を機械で行うシステムです。
【メリット】
●空気の循環が確実にできる
●換気状態を保てる
【デメリット】
●導入コストが高い
●吸排気を機械で行うため電気代が高い
第2種換気
給気は機械で行い、排気は自然に任せるシステムです。
【メリット】
●汚れた空気を取り込みにくい
●クリーンルームなど特殊な場所で利用できる
【デメリット】
●結露が起こりやすい
第3種換気
給気は自然に任せ、排気は機械で行うシステムです。
【メリット】
●室内に空気が溜まりにくい
●結露しにくい
●高気密住宅と相性が良い
【デメリット】
●外気温が室温に影響する場合がある
●気密性の悪い建物では効果を発揮しない
住宅で採用される第1種換気システムと第3種換気システムは、さらに2種類に分けられます。
ダクト(じゃばらのようなパイプ)をつかう「ダクト式」と「ダクトレス」です。
また、第1種換気システムは空気の入れ替え方でも2種類に分けられます。
顕熱交換
空気の入れ替えをする際、取り込む外気を室内の温度と調和させるもの。
全熱交換
空気の入れ替えをする際、取り込む外気と室内の空気で温度も湿度も調節するもの。
第1種ダクト式全熱交換換気システムと第3種ダクト式換気システムのイメージ
24時間換気の値段|各システムの値段の目安
住宅で採用される第1種換気システムと第3種換気システムの値段は、以下のような目安となります。※商品と工事費を合わせた概算の値段です。
第3種ダクトレス換気の安さが際立っています。
その安さの理由は、2時間に1回室内の空気が入れ替わる換気量さえクリアできれば、トイレや浴室・キッチンなどの換気扇を24時間つけっぱなしにすることだけで成り立つため、設置する機械が圧倒的に安価なためです。
運転電力消費量も少なく電気代も安価ですが、機械の劣化による交換頻度が比較的高いことや、24時間換気の本来の目的である「家中の空気をよどませることなく換気する」という点において不十分な場合があるため注意は必要です。
第3種ダクトレス換気はマンションなど気密性が高く、戸建てに比べて室内の空気の容量が少ない場合に多く採用されています。一戸建てでは1・2階のトイレと浴室に設置されることが多いでしょう。
第1種・第3種ダクト式換気システムの費用対効果
先ほども表にまとめましたが、高性能住宅で多く採用されている第1種・第3種ダクト式換気システムの値段は以下の通りです。
●第1種ダクト式換気システム/50万円~70万円
●第3種ダクト式換気システム/20万円~40万円
差額は30万円~50万円程度です。では、その費用対効果はどうなっているのでしょう。
第1種換気システムと第3種換気システムの違い
第1種換気システムと第3種換気システムの大きな違いは2点あります。
第1種換気の方が、より正確に換気計画を実現できる
第1種ダクト式換気システムは、必要な居室に機械で給排気するため、居室ごとに確実な換気ができます。
一方、第3種換気システムは機械で排気し、給気を自然の力に頼るため、第1種換気システムと比べるとムラが出やすいと言えるでしょう。
ただし、第3種換気システムでも気密性が高い住宅であれば、計画していない余計な隙間から空気が流入するのを防げるため、十分に計画換気は可能です。
第1種換気は、外気を取り込む際に温度湿度の調節ができる
第1種換気システムでは、排気する室内の空気と給気する外の空気を特殊フィルターで接触させることができます。それにより、暑い時期・寒い時期の外気の温度・湿度を吸排気の時点で調節できます。
それが外気による室温変化つまり冷暖房費の節約につながるのです。
第1種・第3種ダクト式換気システムのコストを比較
熊本県の多くが属する6地域の一般的住宅モデル(床面積120㎡[36.3坪]、容積280㎥)の家で第1種・第3種ダクト式換気システムの電気代を比較すると、年間の電気代の差額が7,000円程度と言われます。
30万円~50万円程度ある機器の差額を回収するには、約43年~70年かかります。
これにメンテナンス費用や機械の経年劣化による交換費用を考えると、換気システムの差額分を電気代で回収するのは現実出来ではありません。
ただし、電気料金は上昇傾向にあるため、今後の電気料金の上昇度合いによっても回収年は変わってくるでしょう。
第1種換気システムがお勧めの方
寒冷地で断熱性能の高い住宅にお住まいの場合は、全熱交換式の第1種換気システムをお勧めします。外が非常に寒い寒冷地では、外気の給気による熱損失を防ぐことで快適性・光熱費の両方にメリットを期待できるからです。
反対に、温暖地域にお住まいで家にいることがほとんどなく、短時間・部分的にしかエアコンを使わないようなライフスタイルの場合、第1種換気システムによる「金銭的なメリット」は、ほぼ無いと考えられます。
ただし、快適性や将来の資産価値を考え、ワンランク上の高断熱住宅をお求めの場合は、その性能を十分に発揮するためにも、第1種換気システムの採用をお勧めします。
まとめ
本記事では、換気システムの値段の目安や費用対効果を解説しました。
換気システムはメーカーごとに性能や価格が異なり、ハウスメーカー・工務店それぞれの考え方で商品が選定され、建物の価格に含まれていることがほとんどです。
そのため、換気システムの値段を個別に知り、比較検討を行うことは難しいのです。また、施主が希望の換気システムを伝えても、個別の変更に対応してくれる住宅会社は少ないでしょう。
それでも自分が希望する換気システムを導入したい場合は、設計事務所などに相談するのをお勧めします。
ただし、設計や設備仕様決めに費やす実務的コスト、仕入れ価格などは大幅に上がってしまうことは理解しておきましょう。
熊本工務店では、ダクト式の第1種・第3種換気システムをどちらもご提案可能です。
換気にもこだわりたい方や、もっと詳しく換気について知りたい方は、ぜひお気軽に資料請求してください。お客様のご要望に合わせて、最適なバランスの住まいをご提案します。