外張り断熱と充填断熱の違い【メリット・デメリットを徹底解説!】
時代に合わせて住宅に求められる性能は高まってきています。それに伴い、これまで様々な断熱素材や工法が開発されてきました。
断熱工法に注目すると、充填断熱工法(通称:内断熱工法)と外張り断熱工法(通称:外断熱工法)の大きく2種類があります。
本記事では、日本の住宅断熱工法の歴史を振り返り、外断熱工法と内断熱工法の違いや、それぞれのメリット・デメリットについて解説します。
目次
- 1.日本の住宅断熱工法の歴史
- 2.内断熱(充填断熱)工法とは
- 3.内断熱(充填断熱)工法のメリット・デメリット
- 4.外断熱(外張り断熱)工法とは
- 5.外断熱(外張り断熱)工法のメリット・デメリット
- 6.まとめ
日本の住宅断熱工法の歴史
日本の住宅において断熱化の注目度が高まった事には、1970年代に2度起きたオイルショックの影響があります。
原油価格の高騰に伴い、「住宅を温めるのになるべくエネルギーを使わないようにしよう」という考え方が生まれたのです。
現代の住宅建築では考えられないことですが、当時は断熱材による断熱が行なわれていない『無断熱住宅』が多く存在し、冬の家は非常に寒いというのが実状でした。
その頃の日本の住宅は「夏場の暑さや湿気をどうしのぐか」を中心に考えられていたため、風通しの良い家=良い家でした。
つまり、家全体を断熱するという考え方は無かったのです。
グラスウール(充填断熱工法)の登場
1960年代にはグラスウールという断熱材が木造住宅にも使われ始めましたが、一般化したのはやはり1970年代に入ってからです。
グラスウールは現在でも使用されている最もポピュラーな断熱材で、ガラス繊維を綿状にした安価なものです。
当時、この方法で十分に住宅が断熱化されれば良かったのですが、そう上手くは行きませんでした。
住宅の大量供給の流れの中で、基本隙間だらけだった住宅にガラス窓・アルミサッシ・ビニールクロス・接着材を使った新建材が採用され始めました。
これにより、「中途半端な住宅の密閉化」となってしまったのです。
応急処置的に断熱化を進めた日本の住宅ではありましたが、「中途半端な気密」と「住宅の断熱に関する知識不足」が原因で、思わぬ事態が発生します。
結露による被害の発生
「思わぬ事態」というのは、壁の中で結露が発生し、綿状の断熱材が水分を含み、カビやキノコが生えて住宅寿命を縮めるというものでした。
有名な被害には、1977年頃に北海道で起こった「ナミダタケ事件」というものがあります。
新築後たったの2~3年で和室やリビングなどの床が落ちるという恐ろしい事象です。
住宅の質の改善
その後、湿気を防ぐ防水透湿シートや外壁との間に通気層を設ける工法などが生まれ、住宅の質は改善が進みました。そうして充填断熱工法は今に至ります。
その流れとあわせて、外張り断熱工法も採用され始めました。外張り断熱工法は元々、海外で充填断熱工法の断熱効果を上げるリフォームとして考えられていた工法です。
外断熱と内断熱
本来、「外断熱」「内断熱」という言葉は、マンションやビルなどの蓄熱容量の大きい建築素材の断熱工法として議論されていた工法です。
住宅においては「充填断熱」「外張り断熱」という言葉で区別されていましたが、現在では便宜上の「内断熱」「外断熱」の呼び名が通称となり、戸建て住宅でもその呼び名が主流となっています。
内断熱(充填断熱)工法とは
内断熱工法は、構造の柱と柱の間、いわゆる壁の中に断熱材を詰め込んだり吹き付けたり、充填する方法です。
そのため、本来は充填断熱工法と呼ばれていました。
断熱材の種類
内断熱工法の代表的な断熱材には以下のようなものがあります。
・グラスウール/ガラス繊維
・ロックウール/人工鉱物繊維
・セルロースファイバー/新聞紙を再利用
・発泡ウレタン(現場吹き付け)
・発泡ウレタン系の板状断熱材
床の断熱方法
内断熱工法の床の断熱方法に関しては考え方が様々です。
多くの内断熱工法では昔の日本家屋の考え方がまだ残っており、床下は風通しを良くして土台を腐らせないようにする造りになっています。
上の写真の様に、床の部分に綿状の断熱材を張り付ける方法や、床組みの間に板状断熱材をはめ込む断熱方法があります。
また、内断熱は天井の断熱に関しても考え方が様々です。天井裏にグラスウールを置く工法や、天井裏を吹き付けの断熱材で覆ってしまう方法、屋根だけは外断熱工法的に板状の断熱材で屋根断熱をする方法などがあります。
内断熱(充填断熱)工法のメリット・デメリット
内断熱工法のメリット・デメリットを簡単にまとめると以下の様になります。
内断熱工法のメリット
・外断熱工法と比較すると安価にできる
・凹凸が多い間取りにも対応しやすい
内断熱工法のデメリット
・気密性を高めにくい
・施工精度が悪いと壁の中で結露する可能性がある
・断熱欠損箇所が多く外気の熱が伝わりやすい
・熱や湿気など外気の影響を受ける部分があり建物が傷みやすい
私たち熊本工務店は外断熱工法を採用していますが、内断熱工法にもコスト面等のメリットがあります。
ただし、2024年現在求められている住宅性能に対して、気密性を高めにくい点や結露の不安は大きなデメリットと言えます。
いずれも施工精度が重要になるため、コストを抑えて内断熱工法の家づくりを行なうという場合には、しっかりとした施工のできる会社を吟味してください。
外断熱(外張り断熱)工法とは
外断熱工法は、構造の柱と柱の間、いわゆる壁の中に断熱材を埋め込むのではなく、柱などの構造体全部を断熱材で外からすっぽりと包んでしまおうという考え方です。
建物を包むように板状の断熱材を張り付ける事から、本来は外張り断熱工法と呼ばれていました。
外断熱工法と壁の構造
外断熱工法は、よく魔法瓶に例えられます。その理由は、隙間なく断熱材に包まれた室内空間は温度が逃げにくく、冷暖房の効きが良い。つまり、魔法瓶のような家になるためです。
断熱材には基本的に発砲系の板状断熱材が使われます。
床の断熱方法
外断熱を採用している住宅会社でも床の断熱方法の考え方に違いがあります。
基礎の外側まで断熱材で包み込む、最も断熱性の高い「基礎外断熱」が基本です。
しかし、シロアリの影響などを考え、基礎の内側に断熱材を貼り付け、隙間を設けて通風を確保す「基礎内断熱」で施工する会社もあります。
外断熱(外張り断熱)工法のメリット・デメリット
外断熱工法のメリット・デメリットを簡単にまとめると以下の様になります。
外断熱工法のメリット
・気密が取りやすく性能的にバランスの取れた高性能住宅を実現しやすい
・外気と遮断する工法の為、構造材が常にドライで家が長持ちする
・ロフトや小屋裏を活用でき、吹き抜けも作りやすい=大空間の設計がしやすい
外断熱工法のデメリット
・施工技術が必要
・手間がかかる
・材料費が高い
・壁の断熱材の厚みや重さに、内断熱よりも制限がある
・乾燥しやすい
一昔前は、外断熱工法のデメリットとして「外壁の重さを支えられない」といった意見もありました。しかし現在では、専用のビスの開発や断熱材の高性能化によって、その不安は無くなったと言えます。
まとめ
本記事では、日本の住宅断熱工法の歴史を振り返り、外張り断熱工法と充填断熱工法の違いや、それぞれのメリット・デメリットについて解説しました。
外張り断熱工法も充填断熱工法も、断熱材の種類や考え方によってさらに施工方法は細分化されます。
そのため、建築会社ごとに「どの断熱工法が良いのか」意見が分かれるところです。
ご家族が家に求めるものを整理し、各断熱工法等のメリット・デメリットを理解した上で、依頼する建築会社選びを行なってください。
熊本工務店では、コストパフォーマンスの優れた高性能住宅を提供するために、外断熱工法を採用しています。
真冬でも床暖房なしで暖かく、結露の発生しない住宅を、自信を持って提供しております。
1年中快適に暮らせる高性能な家づくりをしたいという方は、是非お気軽にお問い合わせください。