断熱の基礎知識【玄関の断熱を詳しく解説】
住宅の断熱性能において玄関の断熱性はとても重要です。
なぜなら、住宅の中で熱の出入りが一番大きい部分は、窓や玄関などの開口部だからです。
本記事では、家づくりで後悔しないために必要な「玄関の断熱」や玄関ドアの商品について、わかりやすく解説します。
高気密高断熱な家を建てたい方に、きっと役立つ内容です。ぜひ最後までご覧ください。
玄関ドアの断熱の仕組み
冬の暖房時、家から逃げる熱の58%は窓や玄関などの開口部によるものです。
また夏の冷房時、開口部から熱が入り込む割合は全体の73%にも及びます。
このように、建物内で熱の流出入が最も多いのは玄関ドアなどの開口部であり、この部分の断熱性能を高めることはとても効果的です。
また、隙間風が入ってくると玄関部分が冷えるため、玄関ドアは断熱性だけでなく「気密性」も重要になります。
※同じく重要な「窓」の断熱については「断熱の基礎知識【窓の断熱を詳しく解説】」ページをご覧ください。
玄関ドアの断熱性能の3つのポイント
玄関ドアの断熱性能は、見た目では分かりません。しかし、各メーカーの商品はグレードによってその性能が分かれています。
玄関ドアの断熱性能の違いのポイントは、「断熱材」「ドアの枠」「採光のためのガラス」の3つです。
断熱材の有無の違い
玄関ドアには、内部に断熱材が入っているものと、入っていないものがあります。
玄関ドアの素材は「金属製」か「木製」が主流で、一般的には金属製のドアが多く使われています。
しかし、金属は熱をよく伝えるので断熱効果がありません。
対策として、断熱材を挟み込むことで外部の温度の室内への移動を防ぐことができ、断熱材が厚くなるほど断熱性能は高くなります。
玄関ドア枠の構造の違い
ドア枠の部分は、熱を伝えやすい「熱橋(ヒートブリッジ)」になってしまいます。
それを防ぎ断熱効果を上げるため、枠の外側と内側の間に熱の伝導を防止する仕組みをつくったり、枠の半分もしくは枠全部を「樹脂製」にしたりという工夫がされます。
ガラスの構造や種類の違い
光を取り込む目的でガラスの付いた玄関ドアを採用する場合、ガラスからも熱が伝わります。
ガラス部分は、ガラスが1枚のものよりも2枚・3枚と複数のガラスを組み合わせた「複層ガラス」の方が断熱性能は高くなります。
また、ガラスの表面に特殊な金属膜をコーティングした「Low-Eガラス」を用いたものや、複数枚のガラスの中間層に、空気よりも熱の移動を抑える特殊なガスを封入したものも高い断熱効果を発揮します。
このように、「玄関ドア」と言っても「断熱材」「ドアの枠」「採光のためのガラス」などの違いによって、断熱性能に大きな差が出てくるのです。
k2・k 4・D2・D4とは
「K2仕様」や「D2仕様」などの言葉を見聞きしたことはありますか?これらは玄関ドアの「断熱性能」を表しています。
日本は南北に長く、北海道から沖縄まで大きく気候が異なります。
そこで、全国を大きく8つの区域に分け、それぞれに「最低基準」を設定することで、気候に合わせたより良い住環境の実現を目指しています。
玄関ドアの断熱性能表示
玄関ドアメーカーではそれらの数値を意識し、大まかに断熱グレードを分けて商品を販売しています。
国内で有名な玄関ドアのメーカーには、「LIXIL」「YKKAP」「三協アルミ」などがあります。
そして、それぞれが各区域に対応するグレードを設定しています。
「k~」はLIXILや三協アルミの表示記号、「D~」はYKK APの表示記号です。
つまり各メーカーが設定した断熱グレードの名称というわけです。
「k2・k3・k4」では、数字が小さいほど断熱性能が高く寒冷地向きです。
LIXILではさらに極寒地域に推奨する高断熱仕様の商品もあります。
エリアごとに推奨する断熱性能を大まかにまとめると、下記の表のように分けられます。
断熱性に優れた玄関ドアは室内のエアコンの効きを良くするため、暑い地域でも有効です。
ただし、性能が高いドアはそれだけこだわった造りになっているため、価格も高くなってしまいます。
本来ならばどの地区でも性能の良いドアをつけた方が良いですが、価格面も考慮してグレードが分けられているのです。
「k4・D4仕様」より少々高くなりますが、一般的には『「k2・D2仕様」を選べば性能面で間違いはない』と言われています。
木製ドアの特徴
「木」が持つ、断熱性能が高く質感も良いというメリットを活かして、玄関ドアには木製の商品もあります。
ただし、木製の玄関ドアは高価であることやメンテナンスが必要になること、耐久年数が金属製のものよりも短いことなどがデメリットとして挙げられます。
木製ドアは輸入製品のバリエーションが豊富です。しかし、断熱性の高い玄関ドアに関しては、国産でも実績のあるメーカーが増えつつあります。
不具合が発生した場合のメンテナンスや鍵などの部品の取り換えなどを考えると、木製ドアを検討する場合には以下の点を押さえておくことが重要です。
・外国のメーカーの場合、有名で取引数が多く全国に多くの代理店や支店などがある
・サポートを受けられやすい国産メーカーを選択する
次に、実際にどのようなメーカーがあるのかご紹介します。
国内メーカー
ユダ木工
ユダ木工は、1924年に創業した広島県の廿日市市に本社を置く木製ドア専門メーカーです。
価格は60万円前後で、デザインやグレードによっては100万円を超えるものもあります。
キムラ
キムラは、1946年に創業した北海道の札幌に本社を置く住宅資材総合商社です。全国に営業所を展開しており、価格は50万円前後です。
チャネルオリジナル
チャネルオリジナルは、1998年に創業した神奈川県の横浜に本社を置く建築資材会社です。
価格は標準のオリジナル玄関ドアが64万5千円です。
プレイリーホームズ
プレイリーホームズは、1990年創業の長野県にある会社です。
北欧パイン材が使われた木製玄関ドアが主製品で、価格は30万円台からあります。
海外メーカー
ガデリウス
ガデリウス(GADELIUS)は、1890年にスウェーデンで創業したスウェーデン外資専門商社です。
日本法人の本社が東京にあり、神戸にも支店があるため、いざという時の対応面は安心です。
価格は60万円前後で、デザインやグレードによっては100万円を超えるものもあります。
シンプソン
シンプソンは、1941年よりドアメーカーとして発展しているアメリカの会社です。全米で最も歴史あるドアメーカーの1社で、値段には幅があります。
すべて木材で作られており、断熱性能情報を出せないようです。
断熱性能の比較
性能が高いと言われる木製の玄関ドアですが、実際にはどうでしょうか。
金属ドアを含めて「国内メーカーのガラスなし開き戸」の断熱性能を、熱還流率(U値)でランキング形式にすると以下のようになります。
上位は木製ドアメーカーの商品となっていることから、やはり木製ドアの断熱性能が高いことがわかります。
しかし、金属ドアであるLIXILグランデル2(ハイグレード)が第3位にランクインしており、金属ドアでも高い性能を持っていることが分かります。
なお、熊本工務店が所属するWOW Holdingsグループでは、HAET20の超高性能住宅であることを示す「G3認定」を九州の企業で初めて取得しました。
その認定を受けた設計に標準で採用されているのが、このグランデル2(ハイグレード)です。
HEAT20とは
HEAT20は、「2020年を見据えた住宅の高断熱化技術開発委員会」のことで、住宅の高性能(高断熱)化と居住者の健康維持・快適性向上のための普及啓蒙を目的とした団体です。
屋根や外壁、床・窓などの断熱・遮熱などの性能評価基準を設定しており、「G1・G2・G3」のグレードがあります。数字が大きい方が高性能、つまりG3は最高等級です。
引き戸タイプの玄関ドア断熱性能
和風住宅を建築する際や、ドアが開くスペースなどを考慮して「引き戸」を検討することもあるでしょう。
引戸のメリットとして、以下のようなものが挙げられます。
・大きな荷物を運びやすい
・開けっ放しにしやすい
・手がふさがっていても出入りしやすい
・子供やお年寄りでも開け閉めが楽にできる
・強風の影響を受けづらい
しかし、引き戸は「横にスライドして開閉を行う」といった構造上、開き戸と比べて隙間が多くなり、気密性が低くなってしまいます。
気密性が低いと隙間から熱の流入や流出が起こりやすいというデメリットがあります。
気密性も向上させている性能の高い商品もありますが、デザインの選択肢が少なくなってしまうという実状があります。
土間部分の断熱を考える
ライフスタイルの変化に伴って、玄関周りに広めの土間空間を設けたり、リビング等につながる土間を設けたりと「土間」の人気が高まっています。
しかし、玄関の土間部分はヒヤッとするイメージがあるのではないでしょうか。
実はこれまで、特に充填断熱工法では「基礎断熱」の考え方が浸透しておらず、玄関周りは無断熱の施工が多くありました。
そのため、玄関は寒いということになっていたのでしょう。
では、土間部分の断熱は不可能なのでしょうか?
2025年の省エネ基準適合化に向けた技術基準では「基礎の外周部で断熱をしておけば玄関や勝手口の土間の断熱はしなくても良い」ということになっています。
断熱効果を考えれば、土間の下部分にも断熱材を施工するのは効果的です。
ただし、断熱材の上のタイルやモルタルにヒビが入ったり割れたりした場合に、断熱材部分に水が入り込んでしまう可能性があります。
そのため、施工に注意や配慮が必要なことや、水を使った作業や洗い作業などがしにくくなるといったデメリットがあります。
玄関土間の断熱パターン
玄関土間の断熱パターンは「土間周りの基礎の立ち上げの断熱方法」や「土間部分の水平箇所の断熱方法」によって、いくつかのパターンに分けられます。
A~Jまで8パターンを図示しましたが、省エネ基準の技術基準に照らし合わせるとC以降の断熱工法がお勧めです。
充填断熱工法と外断熱工法の土間断熱の違い
充填断熱工法では床面に断熱層があるため、床下断熱と基礎断熱の2つの方法で断熱を行うことになります。
外断熱工法では、基本的に基礎の外周部分もしくは基礎の内側を断熱します。
つまり、外断熱工法は基本的に2025年の省エネ基準適合技術基準に沿ったものになります。
その上で、土間の下まで断熱処理をするかは任意となります。
まとめ
断熱仕様の玄関ドアは、断熱性能のグレードに応じて、メーカーごとにいくつかの種類が用意されています。
玄関ドアを選ぶ際には、お住まいの地域や求めている断熱性能などを総合的に判断して、検討することがポイントです。
熊本工務店の注文住宅は、家全体の断熱のバランスが良くなるように建材を選び、快適な住環境とする、超高性能住宅です。
断熱性能や気密性能にこだわりのある住宅をご検討の際は、ぜひ熊本工務店の資料をご請求ください。